和樂 web セバスチャン高木 (Part.1)


和樂web

小学館がおくる日本文化の多様な楽しみかたを発信するwebメディア! 日本美術、工芸、浮世絵、茶の湯、歌舞伎、焼き物、和菓子など日本文化の入り口となる情報をお届けします。

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オガワブンゴ
オガワブンゴ

今回は、和樂web編集長のセバスチャン高木さんにお話を伺います。
セバスチャン高木さん、よろしくお願いいたします。

高木
高木

よろしくお願いします。

オガワブンゴ
オガワブンゴ

まず、高木さんがPodcast、音声コンテンツを始めた理由は何でしょうか?

高木
高木

シンプルにaudiobook.jpさんとpopIn Waveさんの取り組みにおいて、小学館のWebメディアでも、音声コンテンツを配信できないかっていうような話があったみたいで、やりそうな人が私しかいなかったらしいです。

オガワブンゴ
オガワブンゴ

それはWebメディアとしてですか?社内的に?

高木
高木

社内的でしょうね。
やはり我々って出版社っていう意識があまりに強いので、出版以外飛び出したとしてもWebメディアがせいぜいのところで、多分、Podcastみたいな音声コンテンツ、あるいは動画の配信みたいになると、さらにもう一歩踏み出さないといけないので、そこまでやろうって人はなかなかいなかったっていう感じなんじゃないでしょうか。

オガワブンゴ
オガワブンゴ

なるほど。特に音声に興味があったというよりも、社内事情的な形でそうしようかっていう感じですか?

高木
高木

音声に興味がなかったわけじゃないんですけど、何をやっていいかわからなかった。
「PodcastとWebラジオの違いとか何もわからない」みたいな世界で、あるいはPodcastをやる意味って何?みたいな、そういうのも正直わからなかったのでやりたくてもやれないみたいな感じのところに、ちょうどこういう話が来たので、やってみるかと。

オガワブンゴ
オガワブンゴ

(Podcastの)印象とかイメージっていうのはどうだったんですか?

高木
高木

Podcastについては、将来性はあるなと思ってたんです。

アメリカの事例なんか見てもわかるように、今のPodcastの「ながら需要」ってめちゃめちゃ大きくて、それでアメリカみたいに広告市場ができてしまえば、Podcastは日本でもすごい未来があるなと思っていたんですけど、じゃあ、どうやってそこに収益をつけていくかみたいなのが、今、多分皆さんもそれ悩んでいらっしゃるところなんじゃないかなと思うんですけれども、そこに関してはまだまだ何年もかかるんじゃないかな?と思ってるんです。

オガワブンゴ
オガワブンゴ

そこまで具体的なイメージというのは特になかったけども、可能性はすごく感じてた?

高木
高木

僕はずっと雑誌の編集やってきて、雑誌の枠を売る広告っていうのが難しいなと思っていて、その後、Webメディアやってみろと言われて。Webメディアも結局、雑誌の枠売りのビジネスから広告ビジネスとしては全然抜け出れてない。本来我々ってコンテンツプロバイダなので、コンテンツを配信することによって収益を上げなくちゃいけないのに、みんな枠を売ることしか考えてない。

そのときにPodcastって、我々が作ったコンテンツを配信することによって収益を得ることができて、しかもそこに広告をくっつけることができるんじゃないかなっていうような、すごく本来、出版社がやるべきビジネススタイルに近いんじゃないかなと思いました。

オガワブンゴ
オガワブンゴ

それちょっと僕には全くなかった視点で、そんなこと考えずにやっちゃえっていうのがあって、いきなりガンガン作り始めたので、広告的な部分であるとか、雑誌とかWebでのコンテンツをPodcastにするっていう発想がそもそも僕はなかったので、すごく新鮮です。

高木
高木

そこは多分、オガワさんと僕の一番の違いだと思っていて、出版社ってコンテンツはあるんですよ。

そのコンテンツを今、紙とWebっていうふうにメディア別に出してますけど、そのメディアを変えればいいだけで、本来であれば「紙に出す」「Webメディアに出す」「動画に出す」「音声コンテンツに出す」「オンラインイベントに出す」っていうふうに、一つのコンテンツをマルチメディアで展開するっていう方法を本来はやらなくちゃいけないことで、そのうちの一つが音声コンテンツというかPodcastじゃないかな。

オガワブンゴ
オガワブンゴ

なるほど。
すごい勉強になります。

高木
高木

でも全然うまくいってないから勉強したいですよ。本当に。

オガワブンゴ
オガワブンゴ

僕とか高木さんとかは、結構どっぷり作ってる方だと思うんですよ。でも、周りってまだまだ(やってないし知られていない)じゃないですか?

高木
高木

動画が出てきた頃に似てますよね。

クオリティがバラバラで、それですごく雑なものもあれば、すごく作り込んでいるものがあって、多分まだメソッドが確立していないときのYouTubeみたいな感じがするので面白い。僕のような素人でも参入できるので、これが多分今のYouTubeのように音声コンテンツにプロが入ってきたときに、我々のような音声の素人はどういうふうに立ち向かっていくのかなっていうのは興味深いところでありますよね。

オガワブンゴ
オガワブンゴ

この和樂webでやっている番組自体が、結構多いですよね?

高木
高木

最初は「日本文化はロックだぜ!ベイベ」という、最初にaudiobook.jpさんとpopIn Waveさんと組んで、 日本文化ってちょっと伝統的であるとか、高尚なイメージがあるんですけれども、そうじゃなくて、もっとカジュアルに楽しめるんだよっていうような番組だけがあったんですね。
その後、番組としては作り込んでいるので、もうちょっとWebメディアの和樂webの記事をベースにした番組作ろうよっていうので、「和樂webのそこが現場です」っていうのを作ってたんですけど、そっちの方が数字を取り出してきたんですよね。
なぜかというと配信本数も多いですし、ちょっと下ネタも多かったりして。めちゃめちゃ真面目なタイトルと、すごい下ネタなタイトルと、ただ雑談してるだけのタイトルと、旅に行ってみようみたいなタイトルが一つの番組になってしまっていたので、「これ、ジャンル別に分けないと駄目だろうな」っていう話になって、それで「日本文化はロックだぜ!ベイベ」を残して、ちょっと下ネタ系の夜聞きたいのを「平安ナイトクラブ」っていう、場末のスナックでPodcast配信するみたいな。
後は「旅DEラジオ」っていう、我々って結構取材で地方とかにも行くので、その地方の魅力を伝える番組と、「HOKUSAI PORTAL」っていって、映画の「HOKUSAI」とタイアップをして、「映画を盛り上げるための音声コンテンツも、Podcastで作ってみようよ」って。これ割と新しい試みだと思うんですけど、こういうのをやっていたりするので、それだけ番組が増えました。

オガワブンゴ
オガワブンゴ

僕も聞いてます。個人的には「平安ナイトクラブ」が笑っちゃいますね。ファンタジーのようにも聴こえたり、でも事実としてあるから、勉強になりつつも、ちょっと扉を、小っちゃな扉を覗くような感じで僕は聞いちゃってます。

高木
高木

それで、ちょっと悩みがあるんですよ。今抱えてる悩みが。
今日ちょっと伺いたいなと思ってたんですけれども、Podcastって、台本ってどこまで作るべきなんですか?

オガワブンゴ
オガワブンゴ

番組次第だと思うんですけども、僕の感覚だと、始めと終わりだけ決めてます。
例えば、この番組の場合、「Podcast Meetingインタビュアーのオガワブンゴです」っていうのだけ決めちゃって、あとは各テーマを決めて、終わりの文言を決めるっていう。

高木
高木

なるほど。

オガワブンゴ
オガワブンゴ

意外とそれで話せちゃう人は多いと思うんです。

高木
高木

我々日本文化のことをカジュアルにしたいとか、カジュアルに話せる世界を作りたいねって言っている割に、なかなかカジュアルに話せる人間がいないので、台本作り込まないと番組が成立しないケースが多いんですよ。
例えば、千利休のことを今日話そうぜって言ったときに、正直自分で言うのもなんなんですけど、僕はその和樂っていう日本文化に関する雑誌を20年近くやってきたので、千利休のことをそこそこ話せるわけなんですけど、じゃあ相手をするスタッフがそんな話せるかって言ったら、やっぱりなかなか話せない。そうするとだいたい同じコメントに終始しちゃう問題みたいなのがあって。。。

オガワブンゴ
オガワブンゴ

もう、むしろ立ち位置を逆にしちゃって、アシスタントの方を聞き役にして、高木さんがガンガン話しているぐらいの方がいいんじゃないですかね?

高木
高木

だいたいそうなっていくんですけどね。

オガワブンゴ
オガワブンゴ

やっぱり耳で伝えるしかないじゃないですか。
Podcast自体がもう耳でしかないので、編集をしようとしたところで、大した編集って極端なこと言うとあまりできないじゃない。切った貼ったぐらいしかないってなると、結局話し手の力量って言い方も正しいと思うし、知識量とか話し方とかにもよると思うんですけど、結局そこに引っ張られちゃう。僕は高木さんがガンガン行けるところまで行っちゃった方が良いのかなって思います。

高木
高木

それがレガシーメディアって言われている出版社だとか、あるいはテレビ局の悲しい性なんですよね。
「何か完成したものを作らなくちゃいけないんじゃないか」っていうようなのものに呪縛されていて、だから台本作り込んじゃうんですけど、そうすると、「台本作り込んでる臭さ」みたいなのが臭ってきて、そうすると多分Podcastとはなかなか合わないっていうのがある。

オガワブンゴ
オガワブンゴ

台本を作る方に時間を取られちゃうと、なんか先に進まなかったりするじゃないですか。だから、僕はある時から作り込むのやめたんです。逆に言うと、話せる人をメインにおいて、僕がポコポコ投げかけたりとか、他のアシスタントの方に投げかけてもらうという形にしてから収録〜編集〜完バケまでの作業時間がすごくスムーズになりましたね。

高木
高木

なるほど。ただやっぱり僕自身Podcastっていうか音声コンテンツにめちゃくちゃ将来性を感じてるので、とにかくうちのスタッフ、今常駐のスタッフが5人かな。5人全員話せるようにしたいんですよね。

全員女性なんですけれども、彼女たちのライフスタイルに合わせて、そのPodcastみたいなものを自分で配信できるようになっていくと思っていて。Podcastだけじゃなくて、今後Webメディアって間違いなくスモールメディア化、あるいはニッチメディア化していくと思っていて。スモール化してニッチ化すると何が起こるかっていうと、そこにリソースをかけることができなくて、自分自身がコンテンツになれる人間だけが多分メディアとして生き残れるじゃないかなっていうふうに思っていたりするので。何とか頑張ってほしいって思っちゃって。

オガワブンゴ
オガワブンゴ

そのスタッフの方々は取材されるんですか?

高木
高木

うちのスタッフって、編集素人なので、あと日本文化素人しか集めてないので、なので逆に話せるかもしれないけど自分自身がコンテンツを作って、出していけるか。というとちょっと疑問が残っちゃいます。でもトレーニングだと思っています。

オガワブンゴ
オガワブンゴ

悩ましい問題ですけども、でも逆に言うと、それに合わせたコンテンツもできそうですよね。

高木
高木

だから、本来であれば僕がちょっとそこは「日本文化をカジュアルにカジュアルに」って言ってる割に深掘りしすぎていて、今のその日本文化に関してアマチュアであるうちの運営スタッフたちが楽しめるようなコンテンツを作らなくちゃいけないんですけど、放っておくと教育系コンテンツみたいなって。

オガワブンゴ
オガワブンゴ

確かに学んじゃってます。僕も聞きながら「なるほどな〜」って。

高木
高木

問題は、(しっかりとした)学び系になると、そのPodcastの一つのメリットである「ながら」ができないですよね。いつの間にかPCの前に正座するというか、スマホの前に正座して聞くみたいなっちゃって、そうするともっとそのPodcastの気軽さを出さなくちゃいけないのに、それこそ気が重くなるじゃないですか。そうするとオーディエンスが離れていくみたいな。

オガワブンゴ
オガワブンゴ

一回離れるとずっと離れっぱなしになっちゃうんですよね。

高木
高木

「あんな、もうセバスチャン高木の話なんて小難しいから聞きたくない」なんて一度思われちゃうと。。。一度去ったお客様にもう一度来ていただく、来てもらうなんてことは本当、至難の業ですからね。

オガワブンゴ
オガワブンゴ

ハードルはめちゃめちゃ高いですよね。

高木
高木

でも今はまだ試行錯誤が許されるので。

オガワブンゴ
オガワブンゴ

面白いですね。いろんな視点があって。

高木
高木

多分古いメディアやっている人間じゃないとわからない悩みみたいになっていると思ってて。さっき(収録前)、オガワさんが言ってた「なかなか他のメディアが参入しない」みたいなのってそこにあると思うんですよね。
やっぱり「作んなくちゃいけない」「自分は話なんてできない」「このコンテンツがあの音声コンテンツになるわけなんかない」っていうような、その三つか四つの思い込みがあって、だからさっきおっしゃったように、「台本なしでいい」とか、「頭とケツだけと決めておいて、あと15分とか20分話せばいいんだ」みたいな、そういうようなハードルが下がると、みんなが参加してくるんじゃないかなと思います。

オガワブンゴ
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僕もアドバイスとか求められるんですけども、僕の経験上、出版社とかで編集なり記者の方、(出版に)携わってる方って、話せると思ってるんですよ。

高木
高木

普通に話す話で十分でしょ。

オガワブンゴ
オガワブンゴ

テレビとかラジオとか、あと、イベント司会とか登壇してる人とかを想定してしまうんですけども、そこまでのものって誰も求めてなかったりしてて、「今、あなたそれ話してるのが面白いですよ」っていうのが多々あるんですよね。

高木
高木

それは僕も今会社では盛んに言っていて、それなりに編集経験がある人間だったら、「立ち話で十分だから、もうとにかくやってみてよ」っていうふうに言っていて、そうすると編集者が全員音声コンテンツのプロバイダーになれるじゃないですか。そしたら今の何百倍のコンテンツが小学館から発信できるはずなんですよね。でも、Podcastやるっていうと、ゲストで専門家連れてこようとしたとか。

オガワブンゴ
オガワブンゴ

本当そう。それやっちゃうと、ちょっといろいろ重いですよね。

高木
高木

だから何とか大学になっちゃう。和樂web大学みたいな。「今日は日本史の番組を~」みたいなっちゃうんですけど、だから本当はそうじゃなくて、そういうふうに編集者が自分でコンテンツを配信し出すと、今、Podcastに溢れてるWikipedia読み上げてるだけ系の学びコンテンツっていうのが凌駕できると思うんですよね。

オガワブンゴ
オガワブンゴ

小学館さんでできたら、めちゃめちゃ強いなと思っちゃいます。

高木
高木

うちは文化事業局っていう局で小さい局で社員が10人ちょっとですけど、その人たち、もう本当に日本美術とか西洋のアートのプロなので、全員に番組持ってほしいなと思います。

オガワブンゴ
オガワブンゴ

すごいですよね。面白いことになりそう。

高木
高木

それって例えば、うちで言えば文化事業局ってカルチャーですけど、そのコミックやってる人間であれば、「音声コンテンツ版まんが道」みたいなものできるわけで。
そしたら漫画はこうやって出来てたんだみたいなのを、それ自体がやっぱりコンテンツになっていって、それが会社としてのブランディングになっていくと思うので、本当にやってほしいなと思いますね。

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