ここからは後半です。普段どのような収録環境で、機材だったり、編集ソフトとかは何を使われているんですか?
録音環境でいうと実はスタジオとかじゃなくて、ごくごく当たり前の会議室です。
北日本新聞社さんの会議室?
普通の会議室なので遮音性が特別高いというわけでもありません。
録音機材はTASCAMの2万円ぐらいで買える安価なもので、ちょっと右と左で音声が独立のチャンネルにならないところがあり、後から失敗したなという機材でした。
もうちょっとだけ良いものにしておけば良かったなって思ってます。
マイクはMarantzでAmazonで1本、7000円ぐらいだったので2本使って収録しています。
編集の方はAdobeの何というソフトでしたっけ、オガワさん?
あれはAdobeのAuditionです。
Adobe Auditionを使うつもりでした。ただ、先ほどWe Love Sports!!という富山シティエフエムの番組の話をしましたが、編集もこっちでやりますよっということで、今のところ音声の編集自体も富山シティエフエムさんにお願いしてやってもらっています。
一番良いですね。それ。
ただ、担当者本人はせっかくなのでAdobe Auditionを使いこなしたいと練習していて、今は幾つかの番組を実際に編集しするようになりました。
なるほど。
先ほど前半でお話しした、手軽にスタートできるっていうところにこれって直結するかなと思うんですけど、収録場所も自社の会議室で行ってる。
編集ソフトはAdobe Auditionですが、すでに導入している企業さんも多いですよね?
たまたまうちの場合、AdobeのSuiteで一通り揃っているソフトの中を見てみていたらAuditionもあったみたいな感じですね。
機材に関しては、TASCAMさんというメジャーなブランドですし。ただ、寺田さんがお使いの収録機材は2人の声がそれぞれ録れない。
そこはちょっと勿体なかったですね。
そこはちょっと知識が無かったので専門家の方にご相談しながらやればよかったかなと思います。
AさんとBさんで、Aさんの声が小さいとAさんの声を少し上げたいのに音声ファイルが一緒だとBさんも上がって大きくなってしまうという微妙な調整がやりずらく、これは実際にやってみてよくわかったことでしたね。
今なら自信を持って良いものを買えます。
ちなみに会議室で収録する際、何か気を付けている点はありますか?
やっぱり雑音がなるべく入らないようにしなくてはいけないんのですが、実はこの会議室の近くに自動販売機があり、2日に1回、業者さんが補充されに来られます。
10分ぐらい飲料を追加していく音が物凄い轟音で、これを全部一式これ拾っちゃう。
あと、人が通るようなお昼の時間帯とか雑音が起きやすい時間帯を避けてやるようにしています。
雑音が起きやすい時間帯を避けるということですね。
次ですが、北日本新聞で音声コンテンツを始めてわかったこととか、何か気づいたことってありますか?
今、音声コンテンツってVoicyさんのように、日本経済新聞さんだとか、中国新聞さん、徳島新聞さんとかいろんな新聞社さんが次々と参入してますが、ほとんどがその日の朝刊について、記者やパーソナリティーの方がお知らせするという、言ってみればストレートニュース、僕らの新聞業界でいう生ニュースっていうものを扱っている音声番組が多い。
我々、北日本新聞のコンテンツの場合は日付に縛られない。今日聴いてもいいし1週間後に聴いてもいい。あんまり何かに左右されないものを多く用意しているんですね。
特に「大関番ここだけの話」っていう番組だと、例えばお相撲さんの料理「ちゃんこ料理って一体どんなの食べてるの?」とか、「廻しってどうやってつけてるの?」とか、「制限時間いっぱいですなんて取り組みのことを言いますけれども、じゃあ一体何がどうなったら制限時間いっぱいになっちゃうの?」とか、いつ知っても楽しいし、今すぐ知れば、その日相撲を見るのも楽しくなるというような具合で、そういったものをうまく蓄積すればするほど、どんどん勝手に再生されていくというか。
やっぱり5月20日付朝刊のニュースっていうとその日以外に聴きたくないじゃないですか?でも、日付に左右されなければ、音声コンテンツとして数が増えれば増えるほど、それぞれが毎日何回か再生されて、1本が1日5回再生させるコンテンツを10本持っていれば、それだけで50回、それが20、30、40と増えていくと、蓄積していくことがどんどん価値になり、しかも、日付のないニュースであまり古びないのでいつ聴いてもらってもいい。
結局そうすると記事本体でも古いものも読んでもらえたりするので、アーカイブしていくことの重要性といつでも聴いてもらえる間口の広さみたいなことが、特に音声コンテンツの場合は、目も必要としてなくて耳だけでいい、いわゆる「ながら聴き」をしてもらえるので、いろんなシーンで聴いてもらえるという意味では思っていた以上にいろんな人に利用されているという印象です。
時系列を入れないっていうことですよね。
今の質問をさらに一歩深堀りする形になりますが、音声コンテンツの可能性は寺田さん自身どう捉えてますか?
例えばNetflixとかYouTubeとかもそうですけど、次の番組をレコメンドされるじゃないですか。
極端な話、連続ドラマだったら10話を見終わったのなら、勝手に11話が右横に小さく小窓になってスタンバイされてたりとか、見終わった後「あなたが見た番組はこんな人も見られてます」みたいな形で次の番組が指定されたりするとか。
そういう意味で音声コンテンツも展開するWebの作りとも関係してくると思うんですが、今聴いている番組に対してその人の聴いている傾向から次の番組どうですか?という形でレコメンドされていくと、多分YouTubeと同じように次から次へどんどん聴いてもらえるんじゃないかなと思います。今そこまでしっかりレコメンド機能を持ってる音声コンテンツって無いと思うので、そのあたりをもっと強化していくと「ながら聴き」ができるっていう、目の奪い合いが激しい中で別の土俵で勝負できる。
耳という土俵で勝負ができる音声コンテンツはむしろ伸びしろが大きいと思います。
改めてそういうお話を聞くと「そうだな!」ってすごく思いますが、最後にこれから始める人たちに対して、寺田さんなりのメッセージとかあれば何か教えてください。
むしろ僕らも初心者なのでいろんな人からアドバイスとか、オガワさんも含めてよく言われるのは、まずはプロのアナウンサーや、いわゆる放送局が作ってる番組と同じものは目指さなくていいよと。
逆に言うと、何が僕らのアドバンテージなのか強みなのかっていうと、やっぱり取材した記者は現場の最前線で見ている、スポーツチームの担当記者なら勝っても負けても涙も汗も含めて間近で見ているという部分の目撃者としての強みがあると思う。それを見てきた人間がその感じたものや空気みたいなものを、無骨でもいいから伝えるというか、一番大事なのは熱量を伝えられたら良いなと思っています。
ですので、出演するみんなにも嚙んでもいいし、言い間違えてもいいし、滑舌回らなくてもいいけども、「思いだけは伝えよう」ということで、熱量が伝わるような番組をということで気持ちを一つにしてやっています。
ありがとうございます。
熱量が伝わってきましたね。
地方紙で音声コンテンツをやっているところはありますよね。
それこそさっき名前を上げましたけど、いくつかやってるところはありますが、全体的に基本は朝刊を読んでもらうという狙いから、その紙面のニュースを紹介していくような音声コンテンツが多いかなって思います。
そうですよね。
北日本新聞の音声コンテンツだと記者の方が実際に出演されるじゃないですか。
僕はやっぱり記者の方って、喋れると思うし持っている情報量って膨大。
結局取材したけど紙面で文字にする上で、情報を含めて取捨選択していく、やっぱり音声で取材した記者の方の声を聴けるのは貴重だなと本当に思うんですよね。
実際そうなんですよ。
編集局でも紙面が出来上がって印刷しているとき、夜中の1時とか2時に
デスクと書き終えた記者が「実はあの話こんな話もありましてね」みたいな話があって、「お前、じゃあそれを記事に書けよ」みたいなことがよくあったりします。
すごく良いなって。あと、ちょっと話が逸れますが、新聞の紙面に番組のQRコードを載せたじゃないですか?
あれって、特に地方紙のすごいメリットだと思っていて。
新聞に北日本新聞音声コンテンツのQRコードを貼って、皆さんのポストにお届けした。これってすごいなと。
北日本新聞でいうと、今21万部発行していて、だいたい富山県内の普及率って6割ぐらいです。
やっぱりこのアドバンテージ、強みがあるうちはしっかり生かさないとなと思っています。
ちょっと例えにはならないかもしれませんが、今芥川賞作家の初版って、5万部とかも刷っていない時代なんですよ。
そんな中で富山県だけとはいえ21万部毎日発行しているっていうのは、いくら新聞を読まれなくなったとはいえ、まだまだ媒体としての力は失っていないと思うので、紙媒体としての強みをしっかりネットの世界に転換できるような仕組みという意味では、音声って間口が広く敷居が低い分いろんな方に楽しんでもらえるのかなと思っています。
わかりました。
北日本新聞の音声コンテンツはpopIn Waveから聴けるんですよね?
はい、そうですね。
他にも、地元富山県にいるAKBのアイドルの方とか、グルメ系YouTuberとして富山県内で人気を上げている方とか、色んなコンテンツを用意してますので、もし機会があれば耳をお貸しださい。
ぜひ皆さんよろしくお願いします。
今回は、北日本新聞音声コンテンツの担当であるビジネス開発室の寺田寛さんにお話を伺いました。
寺田さん、ありがとうございました。
どうもありがとうございました。